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PUDDLE:服屋ができない服屋

 

6月の12日と13日に、当店にやって来て下さる『PUDDLE』のJIKIさん

「直感的に他の古着屋さんとは違うと感じた」と言う中島ですが

彼のどこに惹かれたのか、2人の話を聞いているうちに色々と見えてきました

こういう人がいるんだ、こういうお店があるんだということを

今回のColumnを通して少しでも感じていただければ幸いです

 

 

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中島:それではよろしくお願いします。

まずいきなりこんな質問で申し訳ないんですけど、『JIKI』さんっていう苗字初めて聞いたんですけどね、

どういう字を書くんですか?

 

JIKI:僕本名は『JIKI』じゃないんですよ。笑

 

中島:えぇ!?

 

JIKI:呼ばれてるのがJIKIなんです、ラップしてるときとかに。

 

中島:あ、なるほどMC名なんですね。

どうしてJIKIっていう名前になったんですか?

 

JIKI:そんな特に理由があったわけではなくて、響きですかね。

MC、ラップをするときに何か付けないといけないなって、それでJIKIにしました。

 

中島:なるほど、それで周りの人はみんな「JIKIさん、JIKIさん」って呼ばれるんですね。

いやぁ、びっくりした。なるほどMCとしてのお名前なんですね。

今ちょうどそういう話になったんであれなんですけど、

ラップをやっていらっしゃるということで、いつから、どれくらいやってらっしゃるんです?

 

JIKI:え~っとですね…。

ラップをやりだしたのはもう、15,6年くらい前ですかね。20代前半で始めました。

それまではずっとダンスとかしてて、そこからラップを始めた感じですね。

あとは絵を描いたりとかもしてるんですけど。

 

中島:なるほど、大阪でそういうことやってる友達であったりカルチャーがあって、

それが憧れというか、カッコいいなって思わはったんですね?

 

JIKI:そうですそうです。

周りに影響されたっていうのは大きかったと思います。

 

 

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中島:そうしたら聞いてみたかったことなんですけど、

僕らみたいにもともと服屋から始めた服屋と違って、

そういう風な『カルチャー』にずっと触れてきて、この『PUDDLE』さんを出したわけじゃないですか。

服屋、この『PUDDLE』さんをやろうと思ったきっかけは何やったんですか?

 

JIKI:そうですね…、もともと古着はずっと好きだったんです、10代の頃から。

でも仕事は色々なところを転々としてきて。

まぁこの店をやる前はもう良い歳だったんで、一緒のとこに長いこといたんですけど。

ただそこも「楽だから行ってる」みたいな感じで、別にやりたいことではなかったんですよね。笑

そうこうしてるうちに、「なんか自分で店やりたいな」とか、「アメリカ行ってみたいな」とか、

色々な『したいこと』が出てきたんですよ。

それでやっぱり店かなってなったときに、「あ、古着やったらアメリカに買いに行けるやん」って感じで。

 

中島:なるほど~。

アメリカ行きたいし、古着も好きやったしっていうので店やろうってなったんですね。

『PUDDLE』っていうのはどういう意味なんですか?ベタな質問で申し訳ないですけど。

 

JIKI:え~っと、『PUDDLE』って付けたのは、え~っとね…なんでやったかな…。

まぁ後付けの理由とかもいっぱいあるんですけど…。

もともとは『PUDDLE』っていう響きが、大体いつも響きとかで決めちゃうんですけど、

何か良いなって思って。

 

中島:あぁ、『JIKI、PUDDLE』みたいな。

 

JIKI:はい。あと僕ブルースとかも好きなんで、音楽の。

それでちょっと『不穏』な、そういう雰囲気もある名前がよくて、『Muddy Waters』の『泥水』みたいな。

それで『PUDDLE』は『水たまり』っていう意味なんですけど。

 

中島:あ、水たまりっていう意味なんですか?

 

JIKI:はい。それで文字の並びも良かったんで。

それで付けたって感じですかね。

 

中島:あ、それは分かります分かります。

自分も店つくるとき並びは凄く気にしました、はい。

 

JIKI:あとその、初めてアメリカに買い付け行ったとき、水たまりにハマりまくったのが記憶に残ってて。笑

それでこれちょうどいいなって感じですね。

 

 

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中島:そういう…笑

やっぱりこう、付けるべくして付けた名前なんやね。

その、アメリカはいつくらいから行ってるんですか?

 

JIKI:店始めるタイミングで初めて行ったんですよ。

なんで5年ほど前になりますかね。

 

中島:いきなり行かはったん?

1人で何のツテもなく?

 

JIKI:いや、最初は1人が不安やったんで、アメリカも初めてで、

それで友達3人に、1人くらい付いてきてくれるかなと思って声かけてみたら、みんな「行く行く!」ってなって。笑

で、その中に今大正の方で古着屋やってる友達もいて、当時は買い付けとかは全然分かってなかったんですけど。

その友達と一緒に回ろうってなった感じですね。

他の2人も付いてきてくれたんですけど、1人は最初の1週間だけおったりとか、

もう1人は別件とライブ目的で。笑

でもその2人も、今でも店のオリジナルアイテムのデザインお願いしたりとか、

一緒に回ったノリもあるんで、結果一緒に行けて良かったですね。

 

中島:え、それじゃあ最初はちょっとした旅行みたいな感じだったんですか?

JIKIさんだけ仕事モードみたいな?

 

JIKI:最初はそうですね、僕ともう一人の古着屋のやつだけ仕事モードって感じでした。

それで昔よく通ってた古着屋さんや先輩に買い付けのアドバイスはもらってたんですけど、

全然ツテもないし、ディーラーも知らなくて。

もうスリフト(※)だけ回ってましたね、あとフリマと。

 

(※:主に寄付によって集められた洋服を扱うリサイクルショップ)

 

 

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中島:出た~スリフト、見つかりました?

 

JIKI:いやもう「こんなないか?」みたいな。笑

もうアメリカ製の何か、ジーパンにしろTシャツにしろ全然なくて。

最初はヴィンテージとか探してやろうと思って行ってたんですけど。笑

 

中島:全くないでしょ?

 

JIKI:全くないんですよね…。

だから最初はむちゃくちゃこう、ナーバスになってましたね。

そもそもレギュラーすら中々なくて、最初行ったときはもう、ユニクロとかそんなんばっかりでしたね。

 

中島:ファストファッション系ばっかりなんや?

 

JIKI:そうですそうです。さすがにむちゃくちゃ焦りましたね。

毎日焦ってました、ほんと全然眠れなくて、「どうしよう」って。

 

中島:よくそれで、失礼な言い方ですけど、店オープンできましたね。

 

JIKI:本当にそうですね。しかも僕、店借りてから行ったんですよ。

アメリカ行って買い付けできなかったらもう終わりやみたいな感じで。笑

一か八か何とかなるやろうと思って。

 

中島:商品が確保できる保証もなく、

でも場所押さえてしまったからやるしかないと。すごいなぁ…。

けどそれでしたらね、正直最初お客さんって中々来てくれなかったんじゃないですか?

 

JIKI:他の服屋さんから聞いて来てくれはったり、調べて来てくれたりはありました。

でも最初はやっぱり少なかったですね。

で、もうやりながら、「これじゃああかんな」って何とかやっていった感じですね。笑

 

中島:「ちょっとこれは不味いぞ」って?笑

家族もいらっしゃいますよね?

 

JIKI:はい。笑

 

中島:それでまぁ、何とかやっていくうちにお客さんに来ていただけるようになって?

 

JIKI:そうですね、本当徐々にですけど。

 

 

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中島:けど今みたいに、これだけ集められるようになったきっかけとかあったんですか?

好転したというか。

 

JIKI:そうですね、やっぱり2回目行ってからですかね。

当たり前ですけど、1人なんで、行動範囲を広げて掘りまくりました。

今もそうですけど、前回の反省点を修正しながら買い付けのスキルを上げてる感じです。

有難いことに良くしてくれるディーラーも増えて。

まぁでも、ガチガチにスケジュールは決めずに、行き当たりばったりなところも多いです。

 

中島:なるほどね~。またちょっと話を戻すんですけど、

JIKIさんみたいに、カルチャー色というか、そいうのが強い人らがやってる服屋さんって、

僕らみたいな『服屋がやってる服屋』のことをどういう風に見てるんですか?

僕は変な意味じゃなくて、憧れがすごくあるんですよ、JIKIさんみたいな人たちに。

音楽であったりとか、いわゆるアーティスト畑から来た人が出した服屋って、

僕みたいなただずっと服が好きで、服に携わってきた人間が出した服屋と全然違うんですよ。

濃さが違うというか、ピックアップするモノ1つ取っても、店作りにしても。

どういう風に思ってはるんですか?普通の服屋はもう何とも思わないんですか?

 

JIKI:何とも思わないことないっすよ。笑

逆に凄いなって思いますね、なんて言うか「プロやな」って。

僕は本当になんか、古着屋なんですけど、そんな古着屋だとは思ってないというか。

全然古着売ってるんですけど、かといってカルチャーを凄く発信してるとも思ってなくて。

 

中島:そうですか?でもやっぱり出てますよ?

JIKIさん本人はそうでも、やっぱり自然と出とるんですよ。

 

JIKI:そうですかね?

けど最初はそうですね、全然別物やと考えてましたかね。

僕もずっとその、音楽の人らとしか繋がってなかったし、音楽ばっかりやってたんで。

だから結構最初のころは、「僕って服屋か?」みたいな考えになってたんですけど、

途中くらいから「何でもいいやん」ってなって。笑

「出来ることやろう」って。

 

 

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中島:それ大事ですよね、良い意味での開き直りというか。笑

なるほどね、「出来ること」をやってはるんや。

やっぱりこう、話せば話すほど、良い意味で何か違いますよね。

 

JIKI:実は僕も昔、19歳くらいのときに1年ほど古着屋さんでアルバイトしたことがあって、

そこを辞めた後にもまた別の古着屋さんで1年ほど、合計で2年満たないくらいは働いてたんです。

でもその後、十数年は全く違う職種に就いていたんで、

もしかしたらそういうところでも、何か違うのかもしれないですね。

 

中島:なるほど、どこかの古着屋さんで何年も修業して、下地をつくってそのまま古着屋さんを始めたんじゃないから…。

でもそう考えたら本当に思い切りがいいっていうか、稀なケースだと思いますよ正直言って。

普通はやっぱり怖いんで、自分に自信を付けるためにそういうことしはると思うんですけどね。

あ、それとちょっとまた変わるんですけど、ここに店を構えようと思わはったのは、ここに決めたきっかけは何だったんですか?

 

JIKI:ここ、そうですね。

実は僕、最初1年だけ北堀江にあるビルの2階でやってたんですよ。

ずっと路面を探してたんですけど全然なくて。

で、ここって知り合いが店やってたんですよ、もともと。

 

中島:えぇ、そうだったんですね?

それでそのお知り合いのとこが空いたんですか?

 

JIKI:そうです。それでたまたまちょうど入ることが出来て。

 

 

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中島:なるほど。

この辺りって、中心からは離れてるんで、ちょっとコアな店が多いんですか?

 

JIKI:そうですね、多いと思います。

なにわ筋越えてやってはるのは、何か個性的な店が多いと思います。

 

中島:急に変わりますよね、なにわ筋越えると色が。

アメ村とかとも全然違うし。

大阪の人からしてもそういう認識なんですか、やっぱり?

 

JIKI:そうだと思います。

こっち側メインで買い物をする方もいますし。

アメ村で主に買い物する方はちょっと気合入れないとって感じですけど…少し離れてるんで。

それで僕はなにわ筋のこと『国境』って呼んでて。笑

 

中島:あ、国が変わるんやあそこで、なにわ筋で。笑

そういうコアな場所でやってみたいっていう思いもあったんですか?

 

JIKI:場所ってどこでもいいって言えばどこでもいいんですけど、

この辺のちょっとまったりしてる感じは良いですね。

 

 

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中島:まったりしてるんや。

確かに最初僕が『PUDDLE』さん寄せてもらったときも、若い子が溜まってるっていうか、

帰らない感じ出てましたよね?ああいう風な子も多いんですか?

昔の古着屋ってそういうのあったじゃないですか。笑

 

JIKI:ありましたありました、僕もそうだったんで。笑

そういう子も来てくれますね。

 

中島:それはやっぱりJIKIさんに憧れたりとか?

 

JIKI:いや、どうなんですかね?笑

僕あまり服の話はしないんです、聞かれたことで答えられるものは答えるんですけど。

 

中島:服のことは言わないんや?笑

それじゃあ普段ねJIKIさん、お客さんが来はったってなったら、

もちろん「いらっしゃいませ」とかの声はあると思うんですけど、

あんまりこう、接客はしないんですか?

 

JIKI:そんなしないですね…。

何かここは、自分の部屋みたいなもんで、

「そこに遊びに来てくれてる」くらいの感覚なんですよね。

それで気に入ったモノがあったら選んでもらうって感じで。

 

中島:はぁ~。

それ結構深いと思いますよ、そう言えるのは。

 

JIKI:だからなんか、別に店大きくしたいとか、増やしたいっていうのは考えてなくて。

『皆が知ってる隠れ家』みたいになればいいなって思ってます。

隠れ家じゃないやんって話ですけど。笑

 

 

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中島:それじゃあ別に有名になりたいとか、売り上げを思いっきり上げたいとかは、

そんな思ってない感じですか?

 

JIKI:う~ん、そうなんですかね。

まぁやっぱり、自分のペースでやりたいという感じですね。

 

中島:でもまだこう、こういう言い方したらあれですけど、まだまだ伸びしろがあるというか、

途上というか、これからグイグイ行く感じですよね?

 

JIKI:そうですね。

買い付け行ってますけど、まだ全然これでいいんか分かってないんですよね。笑

 

中島:なるほどな~。

でもこう、未完な感じ、失礼やったらごめんなさいね、

粗削りな感じが、ひょっとしたら僕そういうのにも惹かれてるのかも。

 

JIKI:あ~、めちゃくちゃ粗削りやと思いますね。笑

 

中島:うん、その『分かってる人のピック』と、JIKIさんみたいにこう、あがいてると言ったら何ですけど、

そういう人のピックって違うんちゃうかなって、それが良いのかもひょっとしたら。

今何話しててそんな気がしました。

でも本当になんていうか、ヴィンテージに拘ってないっていうか、ご自身の感性でいってますよね?

 

JIKI:そうですね。でもそれもアメリカに行きはじめてから分かったんですけど、

「レギュラー面白いな」ってなってきて。

 

中島:うわぁ、そうなんですね。

 

 

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JIKI:ヴィンテージももちろん、モノが良かったりデザイン良かったりとかあるんですけど、

レギュラーの方が1点物感があるなって思って。

しかもそんなにフューチャーされてないものもいっぱい出てくるじゃないですか。

「何でこれ作ってん」みたいなのとか。

そういうのが面白いなって思うようになってきたのと、あとはやっぱり僕が10代だった90年代、

そのときの感じが、得体の知れないものに出会えたみたいな感じがあるっていうか。

 

中島:そうですよね、もちろん雑誌にも載ってないですし、けどそこに惹かれるんですね。

はぁ~、『レギュラーの面白さ』ね…。なるほどねぇ。

 

JIKI:あと売ったら終わりじゃないですか、ヴィンテージみたいな、俗に言う『良いモノ』とかって。

で、所謂スペシャルとかヴィンテージとか、まぁあったら、買えたら買ってくるんですけど、

そういうモノに付くお客さんより、雰囲気とかそういうので選んでもらえた方が、

お客さんもたぶん面白いんじゃないかって思うんですよね。

なんか『良いモノ』が入って、それがすぐに売れても、次また同じくらいのレベルのモノが入らないと来てくれないよりも、

なんか覗いてみて、「これもいいなぁ」くらいの感じで選んでくれる人の方が、来てくれて、向こうの人も面白いかなと。

 

 

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中島:なるほどね。あぁ~それは凄いな。

何か説得力あるし、それが今日の話で1番…笑

でもそれだと思います。そういう所も惹かれてる理由の1つだと思います。

何かすごく合点がいきました、今。笑

いや~、でもイベント楽しみにしてます。当日はぜひお願いします。

 

JIKI:こちらこそよろしくお願いします。

 

 

 

いかがだったでしょうか

話は二転三転としましたが、共通して感じたのは「見ている景色が違う」ということ

服屋にはできない服屋

『PUDDLE』さんとの出会いが、その様な、まだ知らぬ世界に足を踏み入れていくきっかけとなることを願っています

 

 

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