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OMERSA:Leather Animals

 

「人と触れ合える、人が集まるところに置いてほしい」

そう語るのは、OMERSAのディストリビューターである肥沼さん。

 

当店で取り扱いを開始して2年。

あらためてこの不思議な動物について、肥沼さんと中島に話を伺いました。

 

OMERSA:Leather Animals

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・OMERSAを扱ったきっかけ

 

中島:最初はそうやな、18歳から古着屋で働いていたころに、1、2回OMERSAを見たことがあってん。

当時の洋服屋って今と違ってほんまに服しかなくって、家具とか食器、植物なんか置いてる服屋なんてまあなかった。

けどたまに、バイヤーの連中が服以外のものを仕入れてくることがあって、その中の1つがOMERSAやってん。

でもそんときは全く理解できへんかってんよな。なんやこの不細工できったないのって、

こんなん売れるわけないやろって。(ビンテージのOMERSAは色が褪せ、傷のあるものが多いです)

 

けどなんか違和感というか、引っかかるものがあったんかな。

なんでアメリカまで買い付け行って、こんな革のぬいぐるみ買ってきたんやろって。

ただ昔のことやし、ずっと名前とか忘れてて。

 

せやけど数年前に肥ちゃん(肥沼さん)の展示会に行ったときに、ずらっと並んでんの見て思い出してん。

まあそれできっかけって言ったら、1番の理由っていうのは肥ちゃんが扱ってたからやねんな。

もう出会ってから長い時間経つけど、なんか変な縁があって、好きやねん肥ちゃんが。

それでOMERSAを、せっかくやからやってみよかって。

うちの店に置いてて誰が買ってくれるんやろとか思ったけど、まあそんなん考えててもしゃあないし。

ただ実際に仕入れて店に置いてみたら想像以上に良かってん、空間に温かみが出たというか。

 

 

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肥沼:僕も中島さんと一緒で、扱う前から存在は知ってたんです。

僕も昔古着屋さんで働いていて、ビンテージコレクター的な感じだったんですよ。

それで古着屋仲間からそういったもの(OMERSA)があるっていう情報を聞いて、

実際にビンテージのものを自分で購入したんです。

ただずっとビンテージしか存在しないものだと思ってて、

要はブランド自体が消滅してるものだと思ってたんですよ、勝手に。

現行のものはないと思い込んでたから、ディストリビューションするなんてことは思いもしてなくて。

 

ただあるときに、知り合いから「あれってまだ作ってるんだよね」っていうことをたまたま聞いて。

もうびっくりしたんですけど、それじゃあ1回コンタクトを取ってみようって

ロンドンのメーカーにメールしたんですよ。

でも半年くらい経っても返信が返ってこなくて。「日本で扱わせてほしい」ってメールを何度も送ったんだけど。

ああダメなのかなって諦めかけてたんですけど、どうやら僕の英語が拙いだけだったみたいで。笑

それで友人のトランスレーターの方に、1回ちゃんとした形でメールを送ってもらったらすぐに返事が返ってきたんだよね。

それからコンタクトを取れるようになったんで、「そっちに行くから話をさせて欲しい」って言い出しました。

 

それからすぐにロンドンに渡って、向こうのホテルで会食して僕の気持ちを伝えたんですよね。

100年の歴史があるブランドってなかなかないし、

当時と変わらないモノ作りをしていることに対する敬意を僕は持っているし。

セールスにしてもずっとリバティ(高級ファッション、家庭用品の店が数多く入るロンドンの老舗百貨店)で、

それこそ100年の期間ずっと置いてあるってことも素晴らしいと思うから、ぜひ日本でディストリビューションさせてほしいっていう話をね。

 

あとは彼らが思っていることと、僕が思っていることっていうのがある程度共感できたというか。

子供、孫に代々受け継がれていくものとしてプロダクトアウトしていることだったりだとか。

作り方にしても全てハンドメイドで、他に真似の出来るものではないっていうことが、ユニークであるっていうことが

今ブランドの価値になっているのかなっていうことを話したら即決してくれて。

その場でオーケーを貰えたんですよ、あなたに任せるって。

 

で、そこから日本でのセールスがスタートして5年ほどになりますけど、

結構大きなところでイベントさせて貰ったりだとか、

都内でも順調に広げさせてもらってるっていうのが今の現状ですかね。

ようやくデニム生地を使用した日本別注を用意することもできましたし。

 

 

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中島:そうやったんやな~。

日本でOMERSAの代理店って肥ちゃんのとこだけやんな?

 

 

肥沼:そうです。これだけ歴史があるブランドなのに、

日本では過去にディストリビューターがいないんですよ。

通常の、ビジネスの正規ルートでは1度も輸入されたことがないんですよね。

もちろん個人ではあったんでしょうけど、あれを1体、

わざわざ持って帰るのは関税や送料もかかるので、あまり現実的じゃないじゃないですか。

だからほぼ日本の流通には乗らないんですよね。

なんで国内で個体はめちゃくちゃ少ないし、認知もされていないんです。

 

ただ逆になんで古着屋さんにあったのかって言ったら、アメリカでは非常に価値の高いものなんですよね。

お金持ちの家には必ずOMERSAがあるじゃないですけど、

そういったイメージのあるブランドに向こうではなってたんで。

だからアメリカ仕入れの古着屋さんが、向こうで見つけたら、コンテナに一緒に入れて持って帰ってきてたんです。

 

 

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・OMERSAのアフターケアについて

 

中島:今僕らはお客さんに対して、ブランドのヒストリーであるとかは伝えさせてもらってるんやけど、

ケア面に関してはちゃんと伝えられてへんくて。

さっきも言ったけど、あのアメリカから出てきたやつって大体ボロボロやん。

肥ちゃんが正規輸入元として取引さしてもらっててさ、その辺に関してはどういう風にしてんの?

 

 

肥沼:アフターケアについては、例えば「穴開いちゃった」、「切れちゃった」っていうのは

現地(ロンドン)に送らないと直らないんですよ。

いわゆるアニマルドクター的な方が本社、というか工場にいらっしゃって、

全部ハンドメイドだから直そうと思えばその辺も直せるんです。

ただ状況によっては、例えば「色が抜けちゃった」だとか、濡れた手で触って「まだらになっちゃった」だとか、

そういったケアは日本で出来ますね。

1回ステインを全部綺麗に落として、クリーニングすれば戻すことが出来るんで。

 

あとは目が引っ張り過ぎて取れちゃったとかでも、目は製作工程の最後に入れるんですけど、

それと同じように僕らの方で糸を結びなおすことも出来ます。

だから何か不具合があって、それが日本で対応できることに関してはうちの方でやらせてもらいます。

ただ最初に言った、切れちゃった裂けちゃったっていうのは現地に送らないといけないので、

それはちょっと送料とか時間もかかってきちゃいますね。

 

 

中島:ハンドメイドやから全部直そうと思ったら直せるねんな。

向こうでもその、子供とか孫に引き継がれていくモノってことは、みんな修理なんかもしてんの?

せやけどある意味シンプルな分頑丈やもんね?

 

 

肥沼:向こうでももちろん修理はしますし、ただ頑丈っていうのもそうなんですよね。

実際あのブタ(ビンテージのOMERSAを指さしながら)に関しては100年近く前のものじゃないですか。

それでもこうして現存してるは現存してるんで。まあそういう意味では相当な無茶をしない限り、

見られないほどボコボコになることもないですし、修理したりしながら、ずっと置いておけるんですよね。

ただまあ、例えばああいうゾウなんかだと、中に鉄の骨が入っているんだけど、要は足が長いんで、

体重かけて乗っかったりしてると曲がりやすいとかはあるんですよ。

なんで比較的カバとかブタみたいな、足が短い奴の方が頑丈っていうのはあるかもしれません。

 

 

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肥沼:あとそっか、材料のことで少し説明しておきますね。

通常の家具とかって、基本的にはトップにコーティングがされたレザーを使ってるじゃないですか。

なんで服に色が移ったりとかはないですし、表情も変わりにくいんですよ。

逆にOMERSAに関しては、雰囲気を楽しんでもらうっていうことと、

基本的には家具というよりはフットスツールという扱いなので、表面変化があるんです。

表面をコーティングしていないんで色が多少出ちゃうんですよね。

なんで例えば濡れた手で触るとステイン剤が禿げちゃったり、

服にも色が移っちゃう可能性があるんで、そこだけはお客様に気を付けていただきたいです。

ただそういうものでないと、ああいう雰囲気が出てこないので。

そこを楽しんでもらうってことで、ご理解をいただきたいっていうのをお伝えしたいですね。

 

で、そこがブランドのコンセプトにもなると思うんで、

このデニムもあえて、通常のアパレルで使用されている様な、

ロープ染色の色落ちするデニムを使っているんですよ。

通常家具用のデニムは反応染めとかで、色が落ちないデニムを使ったりするじゃないですか。

けどそれだとやっぱりOMERSAらしさがないんで、あえて色が落ちるデニムを使ってます。

なので、アタリが出ていくことを楽しむものなんだっていう風に捉えてもらうことで、

より面白くOMERSAを見ていただけるんじゃないかな。

 

 

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中島:それでこのデニムのリリースはいつくらいなん?

 

 

肥沼:受注をいただいて、来年を予定しています。

納期が2月くらいだったかな。

 

 

中島:来年か~。今の話の流れになったしなんやけど、

うちでもクリスマスくらいにイベントをさせてもらえたらなって。

せっかくやから10体、15体くらいバ~っと並べたいよね。

あとはそうやな、うちのトレードマーク的な動物をなんか決めたいよな。

この店やったらサイ、この店やったらカバが強いみたいな。

俺はなんかフォルム的にはブタに惹かれるねんけどどうなん?

 

 

肥沼:ブタは個々で体形が微妙に違うんだけど、それがまた良いんだと思う。

カバとかだと顔が微妙に違うんですよ、鼻の穴が曲がってたりとかね。笑

本国からうちに入ってきたときにはいったん並べるんですよ、バ~っと。

そうすると個体によって足が短かったり、目つきが悪かったり、顎がしゃくれてたりとか。

本当に1体1体違うんですよ、同じのがいない。

でも見てるとその個性が可愛く見えてくるんだよね。いいな~って。

 

 

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中島:ずっと作ってきてる職人さんで、同じ型紙使ってんのにそんな差がでるんや。

ええやん、面白い。

 

 

肥沼:型紙は一緒でも、全部ハンドメイドで、中には木の皮を詰めてるじゃないですか。

だからどうしても同じようにはいかないんです。

 

あとは裁断風景を見てもらったら分かり易いんだけど、

使っている革っていうのが1枚革なんですよ、半身じゃない。

イギリスでも基本的に素材として売られている革は半身だから、

1枚革っていうのはOMERSAの為のスペシャルオーダーなんですよ。

というのも革を作る最初の段階で、普通は牛を半分にしちゃうんです。

そこから皮を剥いで加工していくと効率が良いので。

でも1枚革ってなると、牛1頭全身から、まるまる皮を取っていかなきゃならないから大変なんです。

 

でもなんでそれが1枚革じゃないといけないのかっていうと、

OMERSAのパターンを裁断しているときに、1枚革の、牛の背中部分を中心に

左右対称にパターンをとっていかないとだめなんですよ。

というのも「革の伸び率」っていうのが、1枚の革から対称にとっていかないと変わってきちゃって。

もし半身の革で作っちゃうと、中を詰めているうちにどんどんよじれていっちゃうんですよ。

例えばブタを正面からみたら、片方のお腹だけ伸びて飛び出しちゃってるとかね。

だから1枚革からシンメトリーにとっていかないと綺麗に作れないんです。

 

 

中島:なるほどね~。なんか高級靴みたいなもんか。

コードバンシューズとかも高いのはそうやもんね。

 

 

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・OMERSAを購入するにあたって

 

中島:現状うちでは、欲しがってる人はけっこういらっしゃるねんけど、

購入するきっかけっていうのがあれなんよな。

 

 

肥沼:けっこうみんな気にはしてくれてるんですね。

きっかけか~。

 

 

中島:まあ俺らが店で言ってるのは、

出産のときであったり新築のときであったり、なんか祝い事のときがいいんじゃないですかって。

実際買ってくれはるのも、そういったタイミングが多いねんけど。

ただ、例えばアメリカとか、他の国やったらどんな理由で買われてるのか教えてもらってもいい?

 

 

肥沼:アメリカの場合だとそうだな、

実はロバとゾウっていうモデルは、OMERSAがアメリカ市場を見据えて新たに作ったんですよね。

というのも、アメリカでは民主党のマスコットがロバで、共和党のマスコットはゾウなんです。

なんで完全にそこを目掛けてアメリカに持ち込んだんですよね。

他にもブルドッグは投資家を狙って作られていたりとかもあって。

為替用語で、値上がりの傾向が見えるマーケットを「ブル・マーケット」って言うんだけど、

そこから「ブルドッグ」を、いわゆる招き猫的な立ち位置でプロモーションしてみたり。

 

だからアメリカでは最初は、政党の熱心な支持者であったり、投資家がゲン担ぎ的な目的で購入していたんです。

そういったいわゆる富裕層に向けたターゲティングだったこととか、

ファッションやインテリアとはちょっと違った視点でセールスを試みていたっていうのが面白いですよね。

 

それで実際にそれを買っていた人たちの中に、例えば有名な映画監督であったりとか、

イメージの良し悪しは置いといて、詐欺容疑で捕まっちゃった大富豪とかがいたんですよ。

それでそういった人たちの自宅がテレビとか新聞なんかに載ったときに、映り込んでるんです、OMERSAが。

そういうのでどんどん話題になっていって、アメリカでのOMERSAに対するブランドイメージが出来上がったんですよ。

なんでさっき言ったように、アメリカでは非常に価値の高いものとして認知されているんです。

 

 

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中島:なるほどね。じゃあ日本でやったらこれから、どういったポジションと言うか、

こんな役割を担ってくれるといいなみたいなんはある?

 

 

肥沼:そうだなあ。僕はエンドユーザーの方へも直接販売させていただいたことが何度かあるんですけど、

やっぱりオフィスに並べている方がけっこう多いんですよね。

あとは女性の方だと普通に玄関に置いて、出かけるとき座って靴を履いて、帰ってきたら迎えてくれるみたいな。

だからなんだろう、「みんながいるところにいて欲しい」、「人が集まるところにいてもらいたい」っていう感じはありますかね。

あまりこうプロダクトプロダクトしているものじゃなくて、1体1体個体差もあって、

生き物じゃないんだけど、本当に温かみがあるというか。

なんで「どこ」っていうのはないけど、家族の一員として、

やっぱり人と触れ合える、人が集まるところに迎い入れて欲しいですね。

 

 

中島:良いこと言うやん。

今日はほんまいろいろとありがとう。とりあえずブタ1体連れて帰るわ。

 

 

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