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ARATi:自然のキャンドル


奈良と大阪の県境、生駒山の麓に一風変わった蝋燭を作る職人がいます。

その噂を聞いてアトリエを訪ねたのが去年の冬。

そして春を迎え、ようやくご紹介できることとなりました。

蝋燭ブランド『ARATi』の中山さんとの対談、最後まで読んでいただけると幸いです。







中山:蝋燭を作り始めたのが大体、7年くらい前。

それまで僕はアパレルのプリントとか刺繍の企画をして、

メーカーさんに提案するっていう仕事をずっとしていたんですけど、

自分で何か作りたいっていう気持ちが強くあったんです。

プリントとか刺繍って、デザインを考えても結局刷るのはシルクスクリーンの職人さんだったりとか、

プリントの現場の方だったりするんで、作る方も自分で完結したいなって。

それで最初に蝋燭を作ることになったきっかけが、自分の結婚式で。



中島:結婚式?


中山:そうなんです。京都の神社での神前式だったんですけど、

家族だけでこじんまりしようと思ってたら、友達が何人か来てくれることになって。

それじゃあ来てくれたお返しに何かプレゼントしたいなと思ったんです。

それでまぁ僕自身そういう場面で、趣味が全然違う友達に

『形あるもの』を貰ったときって結構困ったりすることが多くて。

何か無くなるものをと考えたとき、蝋燭が出てきたんです。



中島:ふんふん。

その蝋燭っていうのはパッと思い浮かばはったんですか?



中山:なんで蝋燭だったのかっていうと、

僕って元々インドとかネパールとか、アジアの田舎の方に行くのが好きで色々周ったりしていたんですけど、

インドのラダックっていう、富士山の頂上くらい標高が高いところに行ったことがあって。

本当にめちゃくちゃ田舎なんで、電気は自家発電やったりするんですけど停電も凄く多くて、

それで蝋燭を頻繁に使ってたんですよ、そこで暮らしてる人たちは。



中島:はい、はい。



中山:そこは宿とかもないんで、家に泊めてもらう形になるんですけど、

そこで蝋燭の光を囲んで家族が過ごしてる風景が凄く印象に残ったというか。

日本だったらテレビを点けたりして、それを観ながら時間を過ごすっていうのが多いと思うんですけど、

自然と蝋燭の周りに集まって普通に会話をしている、その景色がなんかいいなぁっていうのがずっとあって。

それで蝋燭がさっきの結婚式のお返しにいいんじゃないかって作ったのが、一番初めの蝋燭作りでしたね。







中島:はぁ~。きっかけはその結婚式であったり、インドのことであったり、

色々なことが重なった結果やったんですね。



中山:そうですね。

で、あと僕が作ってる蝋燭の形って、全て『自然の造形』っていうのがあって。

それは僕が生きてきて、色んな刺激を受けてきた中で好きな形がそれだったというか。

元々大阪出身なんですけど、街中で育ったからこそ、

自然に対する憧れがもしかしたら強かったのかもしれないですね。

それでまぁ、『自分が好きな自然の造形をテーマに蝋燭を作っている』というのがざっくりしたやり方です。







中島:蝋燭の材料って一般的には石油系やと思うんですけど、

『ARATi』さんの蝋燭は天然のものを使ってるんですよね、何を使ってるんですか?



中山:蝋燭自体のことを言うと『パーム』、ヤシの葉っぱから作られるんですけど、

そこから作られる蝋を使ってます。特徴としてキラッとこの結晶みたいなものが出来るんですけど…。



中島:触ってみてもいいです?



中山:どうぞ。

そのパームをメーカーさんにオリジナルで配合してもらって、後は溶かして固まらせる時の温度を調整して、

マットな感じであったり、キラッと光らせたりっていうのをしています。

あと材料自体の元々の色っていうのは真っ白なんですよ。



中島:ほんまや真っ白や…。



中山:そうなんです。言わはったように石油系の材料が一般的で、

透明感があって染料に漬けたとき綺麗に染まるんです。

それに対してパームは光を通しにくかったりして、

通すのは通すんですけど、石油系の透明感ある材料はもっと通す力が強いというか。

あと違いとしては『煤(すす)』が出にくいか、出やすいかっていうところ。

勿論石油系の方が煤が多く出るんで、室内で灯すと壁が汚れたりするっていうデメリットがあったりします。

パームは煤が出にくいんで、室内でも使いやすいキャンドルというか、材料になってます。



中島:なるほどね~。








中山:で、染料の話なんですけど、一般的に色を付けるときはキャンドル用の顔料を使うんですよ。

なんですけど、僕は染料も自然のものを使っていて。

例えばこれは土を混ぜて茶色っぽくしてたりとか、これなんかは茜っていう植物で、

服とかでも茜で染めたりすると思うんですけど、それで赤色を出してます。

あとはブルー系やったらインディゴ、藍を使ったり、グレーは竹炭を使ったりとかですね。



中島:これってその色なんや、いや凄いな。

この形っていうのは型があるんですか?



中山:ものによりますね。

これは月の形なんですけど、こういうのはシリコンで型を作ってそこに流し込んで作ってます。

こっちは塊を作って、それを削って丸くしていくっていう。



中島:え、これ1個1個自分で削ってはるの?



中山:そうなんです。



中島:凄いな、表面もツルっとしてる…。



中山:なんかね、最近の心境かもしれないんですけど、

ツルっとしたのが作りたいなあと思って。笑







中島:ハハハ笑。

でもこれ、火を付ける箇所がないと蝋燭やと分からないですね。



中山:そうですね、分からないと思います。



中島:これ蝋燭の芯って、全部固まった後に刺すんですか?



中山:僕はそうしてます。なんかね、最近キャンドルって誰かが『教室』みたいなのを開いて、

そこで作り方を教えてもらう感じが主流だと思うんですけど、僕は自己流なんで作り方変なんですよ。笑

だからまぁ固定概念がないし、作風が被ってることもまずなくて。



中島:いやぁ、良いと思います。このへんとかズラッと並べてみたくなりますもん。

今日は面白かったです、ありがとうございました。



中山:こちらこそありがとうございました。







いかがだったでしょうか。

発売は4月16日の土曜日。

蝋燭の優しい明かりで、心地よい時間を過ごしてみてください。


Price:4,400 YEN ~ 14,300 YEN





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