- UPDATE: 2023.8.20
- Roots
ITUAIS:H.C.P POROSUS
中心から両端に向かって流れるように形を変えるきめ細やかな腑
これを超えてくる財布は、今後扱うことがないでしょう
数多くの財布を見てきた上でそう断言できる佇まい
撮影をする中で味わった高揚感にふとデジャヴを感じたのですが
それはいつか撮った『Marco Begaye』のジュエリーでした
ただそこにあるだけで感じ取れる、圧倒的な美しさと力強さ
至高と呼ぶに相応しい1品です
![](/wp-content/uploads/2023/08/1-3.jpg)
ナイル、シャム、ラージなど、いわゆる『クロコ』と呼ばれる高級レザー
そして中でも最上級とされるのが、このポロサス(スモールクロコダイル)です
スモールと言っても決して身体の大きさを指しているのではなく、その美しく並んだ細かな腑(ふ)が名の由来
さらにそのポロサスの中でも、『H.C.P社(※)』が保有するポロサスを用い、この財布は作られています
※エルメス・キュイール・プレシュー社
エルメスが世界最高の原材料を確保するため、1994年に設立しました
世界的なハイブランドや、選ばれたハイエンドの職人にのみ資材を提供しています
四角い形をした『竹腑』と、円形をした『丸腑』と呼ばれる部分があるクロコダイルのウロコ
その竹腑と丸腑が中心から端に向かって変化していくよう計算して裁断されているのですが
長財布を作るには1匹から取れる革のちょうど中央をくり抜く必要があります
だからこそこの整然と並んだ腑だけで、どれ程の物かが伝わるのです
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2278.jpg)
野生のクロコダイルは絶滅危惧種に認定されており、ワシントン条約で保護されています
そのため製品化されるクロコダイルのほとんどは養殖で育てられた個体なのですが
クロコダイルの飼育は限られた環境の中でしか出来ません
凶暴な性格を持つ動物であることから、成長するにつれ互いに傷つけ合うようになります
そうならないよう、ある程度成長すると個室で育てる必要があり
餌代に加えて莫大な人件費と設備費がかかります
それ故、クロコダイルの革は高級素材とされているのです
飼育、染色、仕上げなど全ての工程において、最高ランクの技術と管理によって作り出されたH.C.Pのポロサス
間違いなく世界最高の皮革素材と言えます
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2303.jpg)
『最高級素材』と聞くと、繊細なイメージを抱く方もいるかもしれません
しかしクロコダイルの革はむしろその逆です
牛革と比べると軽く、その上ハリがあるため型崩れや引き裂きに強く
その耐久性は牛革の10倍とまで言われています
そして経年劣化ではなく、変化を楽しむことが出来るのもクロコダイルの良さ
ややマットに仕上げられた革は、使い込むほどに瑞々しいツヤが現れます
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2311.jpg)
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2434.jpg)
そんなポロサスを使っているからには、その他の要素も徹底的に拘られています
財布の内側に使用されているのは、フランスが誇る世界最高峰のタンナー
アノネイ社が作る『ボックスカーフ アルパイン』という革
フランス産の原皮のみを使用し、良質な源泉水を利用してなめされたボックスカーフは
滑らかでコシとハリのある良質な革となります
その革に強い型押しを施したことで、曲げや伸ばしに強く、尚且つ傷も目立たない素材に
さらに細かなシボを強調させる煌びやかな光沢も魅力で
財布を開く度に、クロコに負けない高揚感を味わえます
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2399.jpg)
また革端の『コバ』も非常に手間のかかる処理が施されています
磨き、色塗り、加熱といった工程を最低でも7,8回繰り返し
最後に蜜蝋を塗って熱で溶かし込み、布でしっかりと磨き上げる
これによりコバの強度が格段に増しており
クロコダイルの革に見られるコバの剥がれを防いでいるのです
その他にも繊細なステッチワークや、機能的でありながらミニマルなデザインなど
見れば見る程に伝わってくる凄まじさ
『最高の素材に一流の仕事』
何か1つ、頂上の景色を知りたい方、その手に取ってみてください
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2443.jpg)
H.C.P POROSUS ROUND ZIP LONG WALLET
![](/wp-content/uploads/2023/08/DSC_2510.jpg)